漢和GROUP
上海漢和貿易有限公司
董事長 高啓洋氏
総経理 安原久満氏
「一本のワインからスタート」
<今回の企業>
近年、世界から注目を集める中国ワイン市場。2005年には中国のアルコール消費量でビール、紹興酒に続く白酒を抜き3位に躍り出てもなお、その勢いは止まらない。日本を含め他先進国のワイン業界がすでに飽和状態にある今、中国をワイン業界最後のターゲットの一つとして、欧米企業が中心に参入し、競争は激化。その中でも、今回取材に協力していただいた「漢和GROUP」は2005年より数少ない日系企業として輸入ワイン業界に参入し、今年2008年7月には上海に直営ワインショップをオープンした。その後確実に売り上げを伸ばし、年末までに蘇州と大連、そして2009年には中国国内に他7、8店舗をオープン予定と、急激な成長を遂げている。今回は、その「漢和GROUP」の董事長・高啓洋氏と総経理・安原久満氏に急成長の秘話を伺った。
−「漢和GROUP」設立までのご経歴を教えてください。
(安原) 慶応大学商学部を卒業後、まず日本の会社に就職しました。その後転職した会社が、後に高が務めていた会社と合併し、高とは同僚として一緒に3年ほど働きました。その時、仕事を通して高と意気投合し、中国で一緒に事業をすることを決めました。
(高) 神奈川大学経済学部入学前に日本に来て、同大学を卒業し、5年ほど日本の会社に勤めました。学生時代から、いずれは自分でビジネスをしたいと思っていたので、日本の会社を辞めて中国に戻り、上海漢和貿易有限公司(注1)を立ち上げました。
注1:漢和GROUPの中の一つの会社。
−中国に来てビジネスを始めようと思ったきっかけは何ですか?
(安原) 私の場合、学生時代は企業に勤めることだけを考えていて、特別に起業願望のようなものはなかったですね。しかし、実際に会社勤めをして、大きい組織の中にいると、自分のやりたいことができないということを知りました。確かに、安定している大企業に就職すれば、給料もキャリアもいいのですが、そのような会社で10年かけて学ぶことを、例えば我々は今2年、3年で習得しているわけです。もちろん企業のトップとして、背負わなければいけない責任感も違ってきますよね。初めは、一本のワイン、そしてお客様もゼロからのスタートとなりましたが、迷いも恐れも無かったですね。
(高) 私は学生の頃からいずれは自分でビジネスをしたいという気持ちがありました。それに加えて、元々何もないところからのスタートでしたから失うものは無かった、ということもありますね。とにかく前に進んで、自分の夢を実現したいという気持ちが強かったです。
−なぜ、「2005年の時期」に、「中国」で、「ワイン」という商品を選ばれたのですか?
(高) まず、私が中国人であるということ、そして中国市場の将来性も考えた上で、以前から「起業をするなら中国でしよう」という話を2人でしていました。そこで、まず2003年に私が上海漢和貿易有限公司を開業しました。当初は日本から文房用具などの商品を受注し、中国で商品を製造、それを日本へ輸出するという貿易形態をとっていました。
(安原) その頃、私はまだ日本で仕事をしていましたが、ある日、知り合いのイタリア人の方から「中国で輸入ワインを扱うビジネスをしてみてはどうか」という話を伺い、いくつかワインメーカーさんを紹介していただきました。それがきっかけとなって、私も日本での仕事を辞め、中国に来て、2005年にはキックオフ(注2)にてワインのテイスティングを行いました。その際に、お越しいただいていた上海のレストランのオーナーさんから、好評をいただいたことをきっかけに、我々は中国で輸入ワインを取り扱ってビジネスをすることを決めました。
注2:中国物流をめぐる日中ワークショップやシンポンジウム。
−事業を開始してから直面した問題点等はありましたか?
(高) 沢山のビジネスチャンスが溢れている中国ですが、その一方でこの国は政治中心の国なので、まずその特徴を知るということが重要でしたね。また、2001年のWTO加盟に伴ってワインボトル一本当たりに対する関税は20%以下まで下げられることになっていたのですが、実際には未だ関税は下がっておらず、約50%もかかるという現状もあります。しかし、このような問題に対して柔軟に対応できることは、中国でビジネスをする上で必要不可欠となっています。
−高様と安原様の間では、どのように役割分担をされていますか?
(高) 私は主に中国人の顧客とスタッフの管理、その他会社経営にかかわる事務関係の仕事を担当しています。
(安原) 私は大学時代にアメリカ留学で習得した英語力を生かし、海外からの仕入れや、メーカーさんとのやりとりを担当しています。高と私とでは、話せる言語も含めてお互いのスキル、強みが違いますから、それらをうまく組み合わせてビジネスに繋げています。
−2005年に御社が開業した頃と比べて、中国のワイン業界はどのように変わってきていますか?
(安原) まず、中国で販売されるワインには二種類ありまして、1つは国内産ワイン、これが全体の約8割を占めていて、残りの2割が我々も扱っている輸入ワインです。現状としまして、輸入ワインに対する需要は徐々に伸びてきてはいますが、中国経済のように急激に伸びているというわけではないですね。その中でも主な要因は関税です。例えば、上海のスーパーマーケットに行けば、20元程度で中国産ワインが買えますが、輸入ワインとなると、安くても70元ほどまで値段が上がってしまうのです。さらに、この関税がいつ頃下がってくるかという見通しすらついていない、というのが現状です。
(高) また、輸入ワインの伸びが急激ではないもう一つの要因としましては、中国産のワインの質も上がってきているということです。最近では、フランスと中国のメーカーさんが協力して欧米に会社を作り、中国産ワインの輸出も行われています。中国産ワインの産地としては、山東省、山西省、新疆ウイグル自治区などがあります。中国でも良い葡萄は取れるのですが、問題は作る技術ですね。ただ、それももう何年もすれば、世界でアピールできるレベルまで来るでしょう。フランスのシャトーラフィット(注3)の最近の発表では、現在はサードラベル(注4)の生産地をチリに置いているのですが、向こう三年間で中国移転を行う計画を練っているそうです。これが実現されれば、中国ワイン市場は益々活性化されますね。
注3:フランス、メドック地区の著名なボルドーワインのシャトーの名称、および同シャトーが生産する赤ワインの銘柄の名称。
注4:シャトーによるファースト、セカンドラベルの基準に達しないため、別のラベルをつけて安い価格で売り出されているもの。
−御社の事業内容を教えてください。
(安原) 事業は主に3つ、ワインの輸入、卸売り、そして小売りがあります。弊社で扱うワインは全て輸入物となっており、イタリア、フランス、アメリカ、オーストラリアなどの7カ国から200種類以上のワインを直輸入しています。開業当初からしばらくの間は、レストランやホテルへ輸入ワインの卸売りをメインとしていました。しかし、実は一般の消費者にとって、ワインをレストランで頼むのはまだまだ高値で、小売店でワインを買ってそれを自宅に持ち帰って飲むという方が大半でした。それから、我々は小売りに力を入れるようになり、特に今年からは積極的に店舗を展開しています。
−7カ国から200種類ものワインを取り扱っている、とおっしゃられましたが、具体的にどのような方法でワインを選ばれていますか?
(安原) まず、ワインの種類が豊富にあるイタリア、フランスには実際に足を運ぶこともあります。また、それとは別に日本、香港、台湾で売れているワインを調べて、それらを取り扱っているメーカーさんの担当者の方に電話で営業をかけます。また、逆に他のメーカーさんからも私に電話やメールが頻繁に来ますね。番号がどこから漏れたのかは知りませんが(笑)。
(高) 多くの企業が中国参入を狙っている理由として、韓国、ロシア、そして中国が未だ開拓されていない最後のワインマーケット、と言われている背景があります。その中でも中国に関しては、今でこそワインが流行っているのは上海、北京、広州くらいですが、今後内陸方面に広がっていけば、これはものすごいマーケットになりえますからね。
−今後、他国からの輸入も考えていますか?
(高) もちろんです。今後はアルゼンチン、ニュージーランド、ドイツからの直輸入も視野に入れています。そういった情報は口コミや調査から入ってきますが、同時に上海ではワイン展覧会なども開催されていますので、そのような場に頻繁に足を運ぶようにしています。
(安原) ただ、輸入先の国を増やすことだけでなく、1つの国から色々なワインを仕入れることも同じように重要です。例えば、中国で一番好まれるフランス産ワインを見ても、種類は豊富で地域によって味は全く異なります。異なる国からワインを輸入するよりも、むしろ既に開拓済みの国の異なる地域から仕入れることも重要です。
−ワインの卸売事業についてですが、どのように卸売先のホテル、レストランを選んでいますか?
(安原) 選んでいるというよりも、単純にワインが売れると思われるレストラン、ホテルに営業に行きます。そういった情報は、雑誌や口コミ、紹介などから入ってきます。卸売先の割合としましては、中国系、日系、欧米系でそれぞれ3分の1ずつくらいですね。また、一般的な上海にあるレストランの中で、中国系は1社の卸売会社と契約する一方、本格イタリアン、フレンチ系のレストランは豊富な種類のワインが揃えるため、2社、3社と契約する傾向があります。そこで、弊社では未契約のレストランはもちろん、他社とすでに契約をされているレストランに営業に行くこともありますね。
−ワインの小売事業についてですが、お客様と接客する上で気をつけている点等はありますか?
(安原) まず、言語というのが一つの課題になっています。というのも、お客様の割合が、卸売りと同様に、中国人、日本人、欧米人それぞれ3分の1ずつくらいとなっていて、その中にはもちろん日本語、もしくは英語しか話せない方もいらっしゃいます。私が店内にいる時は英語、日本語での対応は可能ですが、いない時はスタッフ4名のうち少し英語を話せるものがいるくらいです。ただ、これを全部カバーするというのはとても難しいことですよ。
(高) スタッフの育成というのは大きな問題点です。我々は今年2店舗、そして来年にはさらに7、8店舗の開店を考えていますが、スタッフをどのように育成していくか、というのは早急に解決しなければならない課題です。そこで、今考えている一つの方法としては、展開していく全ての店舗にて同じマニュアルを作成することです。接客の理想は日本のデパートの店員ですね。お越しいただいたお客様には「いらっしゃいませ」を、買っていただいた方にはお礼をしっかり言う、という単純なことを教育することも、正直な話苦労しています。私や安原がいないと、スタッフの働きぶりが全く異なるということも、悩みの一つですね。
そういったこともあり、我々は現状に満足せず、常に良い人材を求めています。優秀な人材を雇えれば、現在のスタッフ4名も含めてさらなる競争が生まれます。その中で、売上や接客方法などで関して点数付けをし、できないスタッフは外し、できる人をまた新しく入れていく、という方法も考えています。
<次号へ続く>
漢和GROUP
上海漢和貿易有限公司
董事長 高啓洋氏
総経理 安原久満氏
住所:上海市長寧区定西路788号凱陽大厦7楼C座
電話:021-6116-9550
FAX:021-6116-9551
インタビュアー:大江航
執筆:大江航
同行:中原周一、日高愛理、鳥谷拓真、渡辺由紀
校正担当:浜田あゆみ、新居翔太
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